「自分らしく生きる働き方」は、株式会社テレワークマネジメントの社員・吉成健太朗さんが執筆しています。生まれつき脊髄性筋萎縮症の吉成さんは、北海道の病院に入院しながら、毎日3時間位、テレワークで働いています。障がい者である吉成さんが、日々のテレワークで得た知識やツールの使い方、テレワークのコツ、感じていることなどを発信しています。
『働くためにできること』
突然ですがここで質問を一つ。
筋力が落ちて手の動く範囲が半径10cm程度の私がキーボード入力をすることはできると思いますか?
答えは簡単、『不可能』です。
この文章を書くためにも、普通ならあまり知られていないアプリケーションを使用しているので、今回はどうやってそれに出会ったのか、私の過去話を交えてご紹介したいと思います。
小学校の時はタイピングがそれなりにできたのですよ。ワープロ検定の2級を持っている程度には。今や一つのキーを押すことすら難しいかもしれません。
ではどうやってこの文章を書いているのか、その方法は「スクリーンキーボード」です。
皆さんはご存じでしょうか?Windowsに標準搭載されているソフトウェアなのですが、知らない人も多い印象があります。
私がこれを知ったのは小学校高学年のときのことです。特別支援学校に通っていた私の先輩方は、みんなスクリーンキーボードを使って作業していました。
マウスカーソルを動かして一文字ずつ入力するソフトウェアを初めて見たとき、
「マウスでポチポチ入力するの大変そうだなぁ」
なんて考えながら、横目で見つつ私はカタカタとキーボードを叩いていたのです。
その頃の私はまだまだ筋力も残っていて、キーボード入力に一切の不自由を感じていませんでした。まさか自分もそれを使うようになるなんて思ってもいなかったはずです。
中学生になった頃からでしょうか。キーボード入力に不自由さを感じるようになりました。頑張れば使えるけれど、すごく疲れを感じるようになりました。
キーボード入力が『不可能』になる。当時の私はパソコンでオンラインゲームをしたり、学校でも使用する頻度が多かったので、キーボード入力が出来なくなることは私にとって恐怖でした。自分の病気を改めて実感するきっかけでもありました。でも、そんな時に先輩方が使用しているスクリーンキーボードを思い出したのです。
「マウスでポチポチ入力するの大変そうだなぁ」
と思っていましたが、そうではありませんでした。
たとえ周りと比べたら作業速度が遅くても、『不可能』にならなければそれで良かったのです。
そんな過去の経験も含めて今できていることが不可能にならないように、不可能が一つでも多く可能になるように情報を集めています。テクノロジーの発達が私たちの不可能を可能にしてくれることは間違いありません。ですから、あとはそれを知るためのアンテナを張るようにしているのです。そこで得た情報を同じような悩みを抱える人に還元していきたいと思います。
働く時に一番最初に問題にあがるのは『パソコンを使った作業は可能か?』ということでしょう。テレワークで働くためには必需品となるパソコンですが、今やパソコンを使用しないで完結できる仕事を探すことの方が難しそうですね。
障がいによってはパソコンを操作する力がない人や不自由を感じている人も多くいると思います。その状態でパソコンを使って仕事をすることは難しいでしょう。ですが、工夫次第では解決できることもあります。
私自身も進行性の病気を持っているため、年々パソコンの操作方法は変わっていっています。新しいソフトウェアを導入してみたり、より軽いマウスを探したり、滑りの良いマウスパッドを買ってみたりといろいろ試しています。しかし、数年前よりも動けなくなった実感はあっても、作業効率が落ちたと感じることはありません。
自分が出来ているから他の人もできるなんてことは思いません。ただ、「仕事をしたい」「テレワークに興味がある」けれど、今は働くための環境がない。または不自由さを感じている人々の手助けが出来ればと思いながら、ツール・デバイスの情報を集める日々を送っています。
障害のある方や障害者雇用への取組を考えている企業の方々に向けて、これからも情報発信を続けてまいります。詳しくお知りになりたいことなどがありましたら、お問い合わせフォームよりお知らせください。
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