田澤由利の徒然テレワーク

キヤノンITS、在宅勤務者をカメラで監視|記事への意見

日経産業新聞(2017年1月17日)に掲載された
『キヤノンITS、在宅勤務者をカメラで監視』という記事が、
ネットで物議を醸し出しているそうです。

「カメラで監視しているのではない」という誤解も含め、テレワークを推進している者として、
私の意見を述べさせていただきます。

ネットや記事では、以下のような意見が占めています。

(1)「机に座っていればいいのか」
(2)「時間ではなく成果物で評価すべき」
(3)「自宅にしても子育てできない」

テレワークは、時間や場所について『柔軟に』仕事ができる働き方です。
しかし、『自由に』ではありません。

自営であれば、まさに本人の自由ですが、企業に勤めている人は
「この仕事、自宅でしたい」と思っても会社が許可しないと、テレワークはできません。

日本の労働者の8割以上が「雇用者」である以上、
日本の「働き方改革」においては、企業が適切なテレワークを制度して導入することが重要です。

テレワークだからといって、特別な管理方法、評価基準を設けるのではなく、
”会社に出社しているのと同様の”業務環境や社員意識を維持できれば、
企業はテレワークを導入しやすくなります。

そして、そのためには、企業のニーズに応じで、ICTを活用する必要があります。

(1)「机に座っていればいいのか」
オフィス内で机に座って仕事をしている状態では、社外の人や家族からパソコンの画面を
「のぞき見」されることはありません。しかし、出先やサテライトオフィス、自宅で仕事をする
テレワークの場合、その危険性が高まります。

これを理由に、企業が「テレワーク禁止」にしてとなってしまうと、従業員は柔軟な働き方が
できなくなります。企業が安心して、社員にテレワークできるようにするために、
今回のようなシステムが必要になります。

「出社時と同様」のセキュリティをどこまで求めるかは、企業ごとの方針ですが、
決して「机に座っていればいい」のではありません。

(2)「時間ではなく成果物で評価すべき」
社員評価において「成果」は重要です。しかし、(業務量や締切などの)裁量権のない社員に対し、
労働時間管理をせずに成果だけを求めると、「長時間労働」のリスクが高まります。

特に子育てや親の介護などで、仕事時間を十分に確保できない「制約社員」の場合、
「成果のみ」の評価において、高い評価を得るためには時間が必要になり、
夜中作業など厳しい労働をすることになりかねません。

「時間ではなく成果」ではなく、「時間と成果」つまり「時間あたりの生産性」で
評価すべきだと考えます。そして、これを適切に評価するためには、たとえテレワークであっても、
時間管理は必要になります。

(3)「自宅にしても子育てできない」
自宅でテレワーク(在宅勤務)を希望する社員は、子育てや親の介護などの理由がある場合が
ほとんどです。しかし、「子育てと仕事」「介護と仕事」を、まったく同時にはできません。

赤ちゃんをあやしながらパソコンに向かっている絵を見かけることがありますが、
現実には仕事にはなりませんし、効率も著しく低下します。

在宅勤務のメリットは、「子育てと仕事を同時にできる」ではなく「子育てと仕事をすぐに
切り替えることができる」だと思います。仕事が終わったらすぐに、保育園に迎えに行ける。
子どもと夕飯を食べてから仕事ができる。などです。

しかし、子育てと仕事の時間をあいまいにすると、「(サボっているのではないかという)不信感」や
「(他の社員との)不公平感」が生まれ、企業におけるテレワークが広がりにくくなります。

テレワーク時の「プライベート時間」と「仕事時間」を、たとえ細切れであってもきっちり管理
できるようにすることで、企業のテレワーク導入のハードルが低くなり、労働者にとっては
長時間労働を防ぐことができます。

日経新聞の記事のタイトル『在宅勤務者をカメラで監視』だけを読むと、
誤解が生じやすいかと思いますが、今回のシステムは、
「人が顔を監視」ではなく「システムが顔を認証」しています。

テレワーク導入のハードルを低くするための、企業の選択肢のひとつであると、私は考えます。

<参考記事>
■日本経済新聞
キヤノンITS、在宅勤務者をカメラで監視
■R25
在宅勤務をカメラ監視…テレワークのあり方に疑問の声
■J-CASTニュース
カメラ付き「在宅勤務」システムってアリ? 開発キヤノン「なにか、誤解が…」
キヤノンITS「テレワークサポーター」