田澤由利の執筆記事, 田澤由利の徒然テレワーク

小泉進次郎大臣の育休取得と働き方改革~見えてくる課題と大臣へのお願い~

環境大臣・小泉進次郎様

お願いがあります。実践しようとされている「育休」のカタチを会社員にも可能にしてください。


(写真:育児休業を2か月取得し、テレワークで仕事をした(育児給付金が支払われる範囲内)、弊社社員と赤ちゃん)

「育休取得について」というブログ記事を拝見させていただきました(https://ameblo.jp/koizumi-shinjiro/entry-12567173956.html)。

 仕事か育休か――。葛藤の末、貴方が選ばれた育休の取り方をまとめさせていただきました。『』内はブログの言葉の引用です。

(1)『公務を最優先にしながら』
(2)『時短勤務、またテレワークの日もある』
(3)『出産から3ヶ月間のなかで「2週間分」取得』

 大臣自ら育休を取得し、男性の育休取得の『空気を変える』ことは、本当に素晴らしいです。事実、発表後のマスコミでの報道は、確実に空気を変えています。

 日本の働き方を変えたいと20年以上取り組んで来た私にとっても、感謝の気持ちでいっぱいです。

 それゆえ、あえて、ここでお願いをさせていただきます。

 ブログに記載されているように、取得を予定されているのは、法律で定められた『育児休業』ではなく、企業や個々の判断で取得できる『育児休暇』です。

 どちらも略すると『育休』ですが、大きな違いは「育児休業は、給付金が支給される」ことです。

何かともの入りになる、子どもが生まれた家庭にとって、給付金はとても重要です。

 私のお願いは、企業に雇用されている男性も、今回のようなカタチで男性の『育児休業』を取得しやすい制度改革、政策を実施いただきたい、というものです。

 項目別に説明させていただきます。

(1)『公務を最優先にしながら』

 特に重要なお立場ではありますが、世の働く人たちも、仕事に対する同様の思いがあります。

 特に男性は、女性が「出産」という身体に負荷のある役割を担うことに対し、より一層「仕事」への責任感が高くなる傾向があると考えます。

(2)『時短勤務、またテレワークの日もある』

『育児・介護休業法』で、会社は時短勤務の措置を行うよう定められています。しかし、時短勤務は、一般的に「通勤」を伴います。

 母親や赤ちゃんとの時間は、育児休業ほど確保することはできません。

 一方、テレワーク(在宅勤務や近くのサテライトオフィス勤務)だと、時間の確保はもちろん、男性の通勤負担も軽減できます。

 しかし、テレワークを制度として導入している企業は、総務省の最新調査(総務省 平成30年通信利用動向調査)で、19.1%(在宅勤務はそのうちの37.6%)です。

 なお、テレワークの場合、細切れの時間の勤務を可能にしたり、過剰労働を防いだり、時間管理を徹底する必要があります。

(3)『出産から3ヶ月間のなかで「2週間分」取得』

 出産後の女性は心が不安定になりがちです。少しでも長く一緒にいて、赤ちゃんを共に面倒をみることができるのは重要です。

 男性が、仕事も育児も両立させるためには、このような取得方法は、とても現実的だと思います。

 しかし、「育児休業」においては、休業中に仕事をすると、「休業」が終了したとみなされ、「育児休業給付金」が支給されなくなります。

 その結果、男性の育児休暇は、(1)や(2)を実現できたとしても、「短い時間しか取得しない」ことになります。

※育児休業中の就労については、厚生労働省の以下の通知を参考ください。

■育児休業期間中に就業した場合の育児休業給付金の取扱い

https://www.mhlw.go.jp/file/06-Seisakujouhou-11600000-Shokugyouanteikyoku/0000042797_2.pdf

■育児休業中の就労について

https://www.soumu.go.jp/main_content/000441378.pdf

 子育ては、赤ちゃんのときだけではありません。

 私自身、仕事をしながら3人の娘を育てた経験で言えば、保育園でも小学校でも、中学・高校になっても、その状況で母親と父親が協力して子育てをしていく必要があります。

ブログには、以下の記述もあります。

『チームの連携を良くして、省内全体のパフォーマンスが上がるように、大臣の働き方も改革していきたいと思います』

 まさに、ここが重要だと、考えます。

 チームで仕事をする職場で「1人だけ長期間休む」と、他の社員に負担がかかります。

 しかし、チームの一員が、今回のようなカタチの育休を取ることになると、「離れていてもチームでコミュニケーションをとりながら業務を進める」ことへの取り組みになります。

 これは、育児休業を取得する男性のためではありません。

 子育て中のすべての家庭、これから増える親の介護、自身の怪我・病気、台風などによる交通トラブルなど、すべての働く人にとってまた企業にとって、「男性の育児休業取得促進」は、大きな「働き方改革」の機会と捉えることができます。

小泉進次郎様

 国は、企業に対し、「男性社員に育児休業の取得を促す」ことの義務化を検討されていると聞きました。とても重要なことだと思います。

 しかし、人手不足が進む中、長期の育児休業の義務化は、企業規模によって、また職種によって、企業の経営ひいては日本経済にまで影響を及ぼす危険性があります。

 男性も取得しやすい「育児休業」の新しい形は、「休む」ことに加え、「母子に寄り添い休業を取りつつ、効率よく働く」選択肢を用意することではないでしょうか。

 貴方が決意された、柔軟な『育休』のカタチを、日本の会社員も可能にできるよう、なにとぞよろしくお願いいたします。

株式会社ワイズスタッフ・株式会社テレワークマネジメント 田澤由利

※本記事は2020年1月20日付のJBpressに掲載されたものです。『小泉進次郎大臣の育休取得と働き方改革 見えてくる課題と大臣へのお願い』