田澤由利の
テレワークブログ

田澤由利(株式会社テレワークマネジメント・株式会社ワイズスタッフ代表取締役)による、テレワークに関する情報や思いを発信。

商社, 企業のテレワーク, 実績

テレワーク導入事例紹介 |住友商事株式会社(後編)

2018年11月にテレワーク制度を導入された、住友商事さんを田澤由利が取材させていただきました。後編では、テレワーク導入の具体的な進め方や導入効果、さらに現状の課題や今後に向けての目標をお伺いしました。
前編はこちらから

導入に向けた推進体制や事前準備について

―いよいよ導入を進める、と決まってから、テレワーク推進体制はどのように構築されましたか?

住友商事様導入事例紹介

ちょうど晴海から大手町への本社移転の時期で、全社横断の本社移転・働き方改革プロジェクトが立ち上がっていましたので、その分科会として人事厚生部をメインに、経営企画部、IT企画推進部、ビル事業部にも参画頂き、立ち上げから半年ぐらいは毎週ミーティングを開き、緊密に連携しながら取り組みました。また、「テレワーク推進担当者」というプロモーターを各部署に設置。制度導入前のトライアルの際からチームのとりまとめや事務局との連絡を担当してもらいました。制度導入後も定期的に推進担当者を集めた情報交換会を実施しており、各部での取り組み状況、好事例の展開、活用ノウハウの共有等を実施しています。

―テレワークの取組に対して経営トップの関わり方はどうでしたか?

弊社の『中期経営計画2020』における人材戦略の基本コンセプトは「Diversity&Inclusion~多様な力を競争力の源泉に~」です。これを実現するため、主に人事の側面から何が必要かを考え、新たに定めた3つの方向性のうち、「多様な個々人が最大限力を発揮するための環境整備」に対する具体策の1つとして、2018年11月にテレワーク制度及びスーパーフレックス制度を導入しました。その他にも2018年の社長の年頭挨拶でテレワークに言及するなど、外部への発信も着々と行ってきました。

―社長様も自らテレワークを体験されたそうですね。

2018年に当時の中村社長(現会長)が都内のサテライトオフィスに赴き、そこからから当時の本社(晴海)での会議にWeb会議ツールを使って参加しました。晴海の会議には兵頭現社長も参加されており、新旧社長がWeb会議で話し合いをするという、おそらく、弊社にとっては史上初の貴重な機会になりました。その様子はしっかり取材をして社内広報紙「SCテレワーク通信」で発信しました。

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―TOPの協力があると社内の理解が進みますよね。その他にもトップマネジメント層の協力がありましたか?

各部門のトップにもいろいろとご協力いただきました。羽田空港で、出張前のモバイルワークの様子の取材に協力してくれた例や、テレワークに関する部門長の顔写真付きの連続インタビューシリーズなどの発信を通じて、会社の「本気度」を社内に伝えることができました。これらはミドルマネジメント層に対しての、力強いアピールになったはずです。

―テレワークのメリットや意義については、社内にどのように周知しましたか?

テレワーク導入に向け、全社説明会を東京、大阪、名古屋、広島で実施しました。計35回で、延べ2,894人が参加となりました。また、欠席者向けには説明会を録画した動画を公開し、後日視聴を促すことで全社への浸透を図りました。さらに、社内イントラ内にテレワーク専用サイトを作り、各種資料やマニュアル、通達、FAQなどをまとめて見られるように工夫しました。

―制度導入前には、トライアルもされましたか?

当社の場合、様々なビジネスを扱っておりますので、本格導入前に導入効果を検証すると共に、課題を抽出し、必要な対策を講じておくことが非常に重要なステップになります。加えて、テレワーク自体の全社的な理解・認知度向上も必要と考え、事務局だけのトライアルも含めると制度導入までに3回のトライアルを行いました。各トライアルの中では、できるだけ多くの人に「やってみる」チャンスとなるように、心がけました。まず事務局トライアルは約50名が参加して実施をしました。次の、1回目の全社トライアルは募集500名に対して60組織 約1000名の応募があり、うれしい悲鳴でした。想定外の人数だったのですが、最終的には希望した全員に参加してもらいました。そして2回目の全社トライアルは125組織 約1900名で実施しましたので、4000名の社員の4分の3程度がトライアルに参加したことになります。

―トライアルの参加者はどのように集めたのですか?

トライアルは個人毎ではなく、組織単位での参加として、全社から公募しました。応募の際には部やチーム毎に「アクションプランシート」の提出を義務付けました。このシートの作成を通じて、自分たちの日々の働き方を振り返ったり、テレワークで目指すこと・検証するポイントなどをトライアル前に話し合ってもらいました。また、トライアル中は実施日毎の振り返りのアンケートを実施したのに加え、トライアル終了時にも詳細なアンケートを行いました。大規模なトライアルを通じて、多くの社員の生の声を集め、制度の検証や課題出しを徹底的に行いました。

―全社トライアル前は、既存のICT環境を使いこなせておらず、Web会議を活用している部署も限られていたそうですね?

社員のITリテラシーに個人差があったため、全社トライアルの前から底上げの施策を打ちました。まずは、計44回(現在も継続中)にわたる「ITサバイバル通信」という社内報で、ICT関連のTIPSの発信を行いました。また、IT企画推進部主導で、全社員向けに昼休みなどを利用した「IT講習会」を実施しました。トータルで89回、延べ1,115人が参加する、過去に例のない大規模な研修になりました。

―トライアル前に、ここまで丁寧に講習会まで開くところはあまり例をみないです。大変丁寧な取り組みですね。

ITリテラシー向上は、単にテレワークのためだけでなく、オフィスワークでもパフォーマンスの向上につながる大事な要素だと思っています。ITの苦手な管理職には必要最小限のシンプルな内容にして、若手とは別の会を設定したり、経営層には執務室への「出前講座」も行いました。実際にWeb会議の利用回数はテレワーク制度導入前と比べて68%増加しました。

制度導入後の取り組みとこれからのビジョンについて

―導入した制度のPDCAをきちんと回すため、テレワーク導入後に全社アンケートも実施されたそうですね?そこから出てきた成果は何ですか?

導入後の活用状況を把握する為、2019年2月に導入後3ヶ月アンケ-トを実施しました。結果は各評価指標において概ね9割以上のポジティブな回答を得ており、導入効果について一定の評価があったと考えています。

具体的には
「個人の生産性向上」
「組織の生産性向上」
「心身の健康増進」
「自己価値向上」
「働きがい向上」
「働きやすさ向上」
の6指標対し、全て、9割以上が「ポジティブな効果があった」と回答しています。
特に、「個人の生産性向上」や「健康増進」、「働きやすさ向上」に関しては96%以上が効果を実感しており、高く評価されています。

新しい働き方は従業員のエンゲージメント向上にもつながっており、「『自由な働き方を認められている』=『会社から信頼されている』ということであり、それに応えようとモチベーションが向上した」との声も多数出てきています。
わずかですが、2018年度の就業継続率も98.6%と向上し、前年度比+0.1%となりました。

―すばらしいですね。一方で見えてきた課題は何ですか?

新しい働き方を「もっと活用したい」という回答が約8割に上っており、現場における利用意向が必ずしも全て実現できていない点が確認できました。 見えてきた課題としては、「テレワークとスーパーフレックスの両制度を活かした新しい働き方がまだ浸透していない」といった点や、「根強い紙・ハンコ文化」等の「業務プロセス・環境がまだ整っていない」という点です。

―一つ目の課題、「制度を活かした新しい働き方の浸透」についてはどんな対策を取りましたか?

このアンケートの結果を踏まえ、各現場に1名ずつ配置するテレワークの推進担当者を集めた情報交換会を実施しました。これまでも推進担当者交流会を計3回実施していますが、直近の会では、「テレワーク・デイズ2019」をテーマに実施しました。
制度導入後に初めて迎える今年のテレワークデイズを、全社でテレワークに全社で取り組む動機づけの良い機会ととらえ、この期間に実施したい施策のアイデアを推進担当者交流会で議論してもらいました。
「期間中の本社完全閉鎖」「管理職のテレワーク実施の義務付け」など、面白いアイデアもたくさん出て、かなり盛り上がりました。最終的には投票等で意見の集約を行い、テレワーク・デイズ期間中の取り組みが優秀な組織を表彰する「アワード」の開催など、実施内容を決めました。

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―それらを含めた施策が、「ワクトラ」ですね?

はい、テレワーク・デイズの期間と合わせた2019年の7月~9月にかけて「Workstyle Transformation 2019(通称ワクトラ)」と題した促進施策を実施しています。
来年度のオリンピックを踏まえた2020TDMや時差ビズとテレワークを一体として実施し、新しい働き方に積極的にトライする期間です。全社員一律の定量目標の達成を通じ、各組織における働き方について議論し、議論した結果を実践、制度のPros/Consをしっかりと見極め、全社の総和としてプラスになるよう、アウトプット志向の働き方の浸透に取り組んでいます。

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―「新しい働き方の浸透」のために、その他に取り組まれたことはありますか?

先に述べましたように、社内への周知としては、制度導入前から「SCテレワーク通信(全9回)」という社内報を作成してきました。導入後はそれをさらにパワーアップした形で、Youtubeを用いた動画での発信を始めました。すでに6回配信済ですが、「SCテレワークちゃんねる!」というチャンネルを設立し、テレワークを利用する社員へのインタビュー、経営層のインタビュー等を継続的に発信し、社内の好事例の紹介、活用ノウハウの共有等を行っています。

―実際に「ワクトラ」全体の取り組みの成果はどんな風に表れていますか?

成果として、3つの定量データをご紹介します。一つ目が複合機の印刷枚数です。ワクトラ期間外平均と比較し、22%削減ができました。二つ目がWeb会議実施回数です。ワクトラ期間外と比較し、68%増加しています。最後に、VPN接続数ですが、ワクトラ期間外と比較し、20%増加しており、徐々にWeb会議やペーパーレスが浸透してきていると考えることができます。
但し、社員アンケートにおいて、「今後テレワークを活用する中で必要だと感じることはなんですか」という質問に対しては、依然として、社内コミュニケーションのIT化、社員のITリテラシー向上が上位にきており、引き続きの課題として認識する必要があると考えています。

―アンケートで出てきたもう一つの課題、「紙・ハンコ文化に象徴される業務プロセス・環境の課題」についてはどんな対策を取りましたか?

まず、「ハンコ文化」については、従来から導入されてはいたものの、なかなか利用が進まなかった起案回付システムの積極的な活用の推奨を行いました。また、「紙文化」については、そもそもテレワーク導入と同時に本社移転を行う予定でしたので、既に制度導入前から引っ越しと絡めたペーパーレスの促進を展開していました。
具体的には「書類半減・書類のあり方見直し(4.6fm/人⇒2.1fm/人)」
「ファイルサーバー上のデータ整理(コンサル支援の下、全部署で整理実施)」
「会議のあり方見直し(ペーパーレス会議システム等による会議効率化実施等)」
「ICTインフラ環境の抜本的な刷新」
に取り組み、会議については会議室へのモニター設置やTV会議システムの刷新、iPadの配布等でペーパーレスがかなり進みました。

―最後に、今後の取り組みについて教えてください。

弊社は今年、創業100周年を迎えます。これからの新たな100年に向けて、「Enriching lives and the world」というコーポレートメッセージを掲げました。世界を豊かにするためには、社員一人ひとりが働き方を見直し、まずは自分自身を「豊か」にしていくことが必要です。テレワークはそれを達成するための重要なツールだと思いますので、引き続き、様々な取り組みを通じて利活用を促進していきたいと思います。

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