田澤由利の
テレワークブログ

田澤由利(株式会社テレワークマネジメント・株式会社ワイズスタッフ代表取締役)による、テレワークに関する情報や思いを発信。

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テレワークと健康の関係性とは?|ILOレポートを解説

こんにちは、しのです。

ILO(国際労働機関)が「いつでもどこでも働く:世界の仕事に対する影響(Working anytime, anywhere: The effects on the world of work)」というレポートを発表しました。今日は、これについて解説していきます。

このレポートでは、テレワークの各国での定義、人数、テレワークの効果、テレワークの悪影響、テレワークに関する各国の政策、今後の政策提言について述べています。今回はその中でテレワークの効果と悪影響について解説していきたいと思います。

■テレワークの効果
テレワークの効果としては、テレワーカーの方が自律的に仕事をしている(始業、終業など自由に設定できる)割合が多い、会社で働くよりも集中しているなどを挙げています(ただし、ICTの水準が低いテレワークの場合はその限りではありません)。

■テレワークは健康に悪い?
次にテレワークの悪影響について紹介しましょう。ここでは主に健康被害を取り上げています。
夜中に目が覚めてしまうと答えた人は「常時在宅勤務者」「頻度の高いモバイルワーカー」「機会があればテレワークをする人」「常時出勤者」の順に高くなっています。また、仕事が健康に悪影響を与えていると答えた人の割合は、「頻度の高いモバイルワーカー」「常時在宅勤務者」「常時出勤者」「機会があればテレワークをする人」の順に高くなっています。これだけみるとテレワークは健康に悪影響を与えると結論付けてしまいそうです。しかし、これが本当であるかを確かめるためにこのレポートでは多変量解析を行っています。

多変量解析について理解するためにこんな例をあげましょう。
親の学歴と子供の学歴が比例する、というデータがあったとします。これを見て、学力というのは遺伝で決まるのだ、だから何をしても無駄だ、と思うのは早計です。高学歴の親を持つ子の学歴が高いのは、親が家庭学習をするように熱心に言っていたからかもしれませんし、塾に通っていたのかもしれません。教育熱心な居住区に住んでいるため先生の質が良かったからかもしれませんし、学力の高い友人がいて切磋琢磨して勉強したのかもしれません。あるいは、親に大学に行かせるだけの財力があっただけかもしれません。このように子供の学歴に影響を与える要因は家庭外での学習時間、通塾の有無、先生の質、友人の学力、親の所得など様々なものがあります。これらの要因をすべて取り除いた上で、なお、親の学歴が子供の学歴に影響を与えている場合に、親の学歴は子供の学歴に影響を与えるといえます。このようにいくつもの要因を考慮して分析していくことを多変量解析といいます。

■健康に悪影響を及ぼすのは持ち帰り残業
それでは健康とテレワークの影響について多変量解析した結果はどうでしょうか。

まず睡眠に与える影響をみていきましょう。睡眠に影響を与える可能性があるものは
・テレワークの種類(「頻度の高いモバイルワーカー」「機会があればテレワークをする人」「在宅勤務者」「その他」「常時出勤者」)
・労働時間
・仕事の集中度
・仕事の自律性
・仕事を失う不安
・テレワークによる残業
・性別、年齢、国、職業、家計の種類
です。

分析の結果、テレワークの種類は睡眠に影響を与えていません。先ほどの「常時在宅勤務者」「頻度の高いモバイルワーカー」「機会があればテレワークをする人」は、「常時出勤者」よりも睡眠の質が悪いというデータは、多変量解析においては支持されません。ただし、テレワークによる残業は睡眠に悪影響を与えており、頻度が高いほど影響が大きいです。いわゆる持ち帰り残業は健康に悪影響を与えるという常識的な結論ですが、テレワークそれ自体が睡眠に悪影響を与えるわけではないのです。
この他に、テレワークが健康に与える悪影響ですが、「機会があればテレワークをする人」が健康に正の影響を与えていて、テレワークによる残業は健康に悪影響を与えています。仕事中のストレスについてもテレワークの種類は影響を与えておらず、持ち帰りテレワークは健康に悪影響を与えています。こちらからも健康に悪影響を及ぼすのは持ち帰り残業であってテレワークそのものではないということがわかります。

このレポートは一部、誤った紹介記事が出回ってしまいましたが、きちんと読んでみるととても常識的な結論だということがわかります。このレポートは他にも興味深い報告がされていますので、またの機会にご紹介しましょう。

もし、御社にテレワークと健康の関係について誤解、もしくは心配している方がいらっしゃればこのブログをご紹介ください。

また、弊社では健康にテレワークを実施するためのお手伝いもいたします。お気軽にお問い合わせください。

(注)今回の解説に対応するデータは原文中の以下のものです。
・p25 Fig6
・p35 Fig10
・p39 Fig12
・p39 Fig13
・p70 Annex2
・p71 Annex2
・p69 Annex2

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